残業代を支払うことなしに法定労働時間を超えた労働をさせること、いわゆるサービス残業は労働基準法に反する違法行為にあたります。
にも関わらず、介護業界ではいまだにサービス残業が横行している事業所も存在します。
その原因の1つが、介護記録の記入作業です。
介護記録とは施設利用者の様子、ケアプランの内容、事故の報告、排せつや食事について記録するものであり、利用者の生活や健康状態を他のスタッフや利用者の家族とシェアする目的があります。
この介護記録が介護士を悩ませており、介護記録は重要ではあるものの、優先順位の低い作業と捉えられています。
というのは、介護士が優先すべき仕事は利用者のケアであり、介護記録に気を奪われ利用者の事故を防ぐことができなければ大きな問題となるし、記録作業に集中してしまい注意を払われていないことに不快感を覚える利用者もいるためです。
そのため介護記録の作成は後回しにする介護士が多く、結果として残業で処理することになるのです。
ここで問題なのが、介護業界に「介護記録での残業は自己責任」という考え方があることです。
定時までに記録作業が終わらないのは仕事ができないからであり、それを処理するために無償で残業するのは当たり前という暴論です。
しかし2019年の介護労働実態調査報告書によると、残業の原因の約70%が記録作業となっています。
7割の介護士が定時までに記録を終わらせられていないことを、果たして自己責任と呼べるのかは疑問です。
誰でも定時までに記録作業を終わらせることができる環境整備やICT化の推進、もしくは残業に関する取り締まりの強化などが必須です。